我と我が身と彼のものと。

常在辞世。渋枯れ好みの“詫びオタク”…なんとなく更新中。

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タケキクロガネ(マジンカイザー二次創作)

 魔神は今、大地に膝をつき澄み渡った空を見上げている。
 かつて『鉄の城(くろがねのしろ)』と謳われた鉄壁の装甲は、焼け歪み罅割れ剥がれ落ち。無残に砕かれ半壊した胸の放射板からは、再び救世の焔が吐き出されることはないだろう。
 削げ落ちた尖角と冠の狭間から、ようやく名残を確認できるほどの、紅蓮の飛翼だったものが覗いている。
 その灯りの落ち、破れた防護壁の裂け目から差す光で朧に浮かぶコクピットの中――ぎり、と歯牙を噛み締めて、兜甲児は魔神と同じ空を睨み据えていた。
 ヘルメットのバイザーは破損し、露になった頬を一筋の血が流れている。
 煤で汚れた顔貌の中にあって、意志の強い双眼だけが、爛々と光を宿して不屈の闘志を示している。
 特殊ラバーの強化服は所々に破れ、研ぎ澄まされたバネのような肉体が覗いている。その中に混じる鈍色の異質……過ぎし日の闘いで失くした生身を補う、機械仕掛けの代体から、キリキリと微かな悲鳴が漏れ零れていた。
 ――これだけの……。
 これだけの代償を払い、献身を尽くしたというのに。
 父を、母を、友を……総てを捥ぎ取られ、それでも歯を喰いしばり、責務を全うし続けてきたというのに。
 ――その報いが、この仕打ちだというのか……。
 やりきれぬ憤りの中、甲児は漠然と思考する。苦々しく噛み込む奥歯が、再び捩れた煩悶の音を鳴らした。
 人類の守護神。
 夢の新エネルギー。
 恩恵を貪るうちは持て囃し、こちらのアナウンスには耳すら貸そうとしなかった。目を背け続けた危惧がひとたび顕在すると、ヒステリックに喚き考えのない糾弾を連中は開始する。
 ――ならば、鉄也さんは一体なんの為に……。
 友の決断は、人々の安らかな日々の為ではなかったのか? 己の命と引き換えに願ったのは、お前らが享受する為の平和だったのではないのか? それを――

『こんな危険なものだとは知らされていなかった!』
『光子力は人類の負の遺産だ!』

 ――嘘だ……。
 知らなかったのではない。〝知ろうとしなかった〟だけだろう?
 我々は最初から、運用に付き纏うリスクは提示していた筈だ。ほんの少し知ろうとさえしたならば、メディアでも論文でも、あらゆる場所から簡単に『警鐘の発信』は目に入ってきた筈だ。なのに。
 侵略者の喧伝に踊らされ――
 低く易き方へと転がり堕ちて――
 ……いや。
 それはもう言うまい。
 ふつふつと湧き上がる呪詛を押し返し、甲児はすっと天を見上げる。先ほどまでの劫火が嘘のように、ただどこまでも果てしなく、抜けるように静かな蒼だけが広がっていた。
 皮肉に透き通ってゆくその先に、終局をもたらす因業の陰は、未だわずかにも見えてきてはいない。
 ――せめて、この一撃だけは……。
 甲児は決意と共に、鋼へと換装された歪な右腕に力を込めた。背後には、瓦解し朽ち果てた光子の砦が、黒煙を纏って聳えている。
 発令室との通信は、とうに途絶えていた。
 生存者の有無すらも、今の甲児に知る術はなかった。
 だとしても、信じて守らなければならない。恩師の、弟の、悪友の――そして恋人の為に、最後の最後まで闘い抜かなければならない。
 祈りにも似た覚悟を込めて、甲児は操縦桿をゆっくりと押し出す。その魂に応えるように、魔神の残された右腕が天空の頂を軋みながら捉える。豪腕の継ぎ目が、ヒュルヒュルと吸気音を立て始めた。粒子を伴って、零れた刃がジリジリと回転を開始する。
 次の瞬間、遥か彼方の高みに弾頭の階が煌いた。
 そして甲児は、力の限り叫ぶ。
「タァアァァァボ……スマッシャァァアァァァァアァアァァァ――」

 ※この二次創作は、『桜多吾作版マジンガー三部作』の世界観を下敷きにしております。

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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2013/04/12(金) 13:15:49
  2. 二次創作
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