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【  2017年07月  】 

伝怪 10

伝怪

2017.07.14 (Fri)

  あとは、どこをどう走ったのか覚えていない。いつの間にか公園に飛び込んでいた聡美は、遊歩道を滅茶苦茶にぬって、気がつくと図書館の前に立っていた。 肩を喘がせ、鞄を抱きしめそのシルエットを見上げる。 常緑樹の生垣で公園から仕切られた、サイコロを重ねたような独特の形――無意識に知った道をたどったのか。ただの偶然なのか。どちらにしろ、暗がりに浮かぶ見慣れたタイル張りの建物が、今はとても頼もしかった。(よか...全文を読む

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伝怪 09

伝怪

2017.07.08 (Sat)

  やがてバスは市街地を経由し、郊外の新興住宅地を目指してゆく。 県道をそれ、私鉄の線路を潜るアンダーパスを通過するころには、町はすっかり宵闇の青につつまれていた。 帰宅時間も近づいたのか、バス停のたびに乗客も増えてゆく。 聡美はただぼんやりと、それを眺めていた。(大丈夫、大丈夫――) ここにはもう怪人はいない。それに冷静になってみれば、あれはただの幻覚だ。どんなにはっきり見えても、実際に襲ってくるは...全文を読む

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伝怪 08

伝怪

2017.07.01 (Sat)

  聡美はそれから、ひとりで家にいられなくなった。家の中にひとりでいると、どこから母の影……いや、あの怪人に囚われるか、わからなくなったからだ。 もちろんそれは、聡美が生み出した幻覚なのだろう。 けれど、玄関の隅にクローゼットの陰。家の中にできたほんのわずかな闇の隙間からでも、いつも男は聡美を見つめていた。たとえば風呂で髪を洗っている時、夜眠ろうと目をつむった時、閉じたまぶたの裏の些細な闇からも、緋色...全文を読む

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